2017年4月23日日曜日


ブルーインパルスが阿蘇の空を飛んでいきました。苗代の水見からかえると路地を隣のカズコオバサマが空を見上げて「 ひこうきがこんねー」と行ったりきたり、ああそうか今朝の新聞に載っていたブルーインパルスのことだなーと思いましたが、あれは確か熊本城のほうではなかったかなーと思いました。でも南阿蘇にも来るのかなーとも思い、「もう来る時間ですか」というと、「11時半にはなった、おかしいねーこんねー」と言いました。一人暮らしのカズコオバサマはボクの顔を見てずいぶん白髪が増えたねーとあらためて言うので、そうですねーと答えたりしながら、自分ももう90歳になるといいながらふたりで明るい道路に座って雲ひとつない空を見上げていました。
こんのかもしれん、とボクもこないのかもなーとぼんやりとしながら、オバサマ地震の後は一年が経ちますけれどいかがですかと聞くと、今はだいぶいいけどいろいろ病院も回った、熊本の娘のところに避難したりじりつしんけいがおかしくなって、たいへんじゃッったけどようようよくなった、というので一人暮らしのカズコオバサマとゆっくりとまぶしい空を見ていることがうれしく感じていたときに、真っ青な空にすーっと一直線に雲が伸びていき、ジェット音が鳴ったのかならなかったのか、雲だけが白く伸びていくので、ああ、アアと、おばさんあっちあっちと慌てて指をさすと、カズコオバサマは予想以上にしっかりとその雲のほうを向いているので、又なんだかうれしくなって、ボクはきましたねー、と笑顔になりました。
 真っ直ぐなひこうき雲を見ていると、そのつづきにこんどはまるくなるのかな、ふわとっとひろがって分かれて飛んだりするのかなと、全速で軽トラからカメラをつかんで、テレビで見たブルーインパルスのように想像しましたが、眼の前のそらには音もなく、でも律儀なようすのサッパリと真っ直ぐな雲が伸びているばかり。どのくらいの時間でしょうか、結局つぎの雲は現れることもなく、真っ青な空の真っ直ぐな雲はゆるやかに溶けていくようでした。
つぎはなかねー、阿蘇市のほうに行ったバイ、おわりだろう、とカズコオバサマが言うのを待って、ぼくは始めてみるブルーインパルスに思いがけずうれしくなって、 おわりみたいだけどやっぱり南阿蘇にも来ましたねー、きっとくまもとをあちこち飛んで見せているのですね、きましたねとボクは言うと、消えて行くバイ、とカズコオバサマのほうがきっぱりとしているので、そうですねと答えました。
長生きの秘訣は好奇心かもしれません、ブルーインパルスと聞いてボクなどは戦闘機の墜落事故や、高校時代の英単語帳のインパルスのところには impulse buy?衝動買いと書いてあったけれどほんとうか、ということ、オリンピックの開会式をこどもだった母親が見上げた、という話くらいですが、熊本地震の一年後に隣のおばあさんと真っ青な空に真っ直ぐな白い雲を見上げた、という思い出が増えた、来るのか来ないのか、なんだか少しドキドキした、やっぱりインパルス、衝動は大切だな、とあらためて感じました。


きのうの夜はたのくろ納屋で友人たちと集まってご飯を食べたり飲んだりしましたが、ボクの中ではちょうど熊本地震から一年経つのだなぁ、とみなのあいかわらずの顔を見て、楽しく、結局眠れなかった、ボク自身はタイミングを逸し飲むに飲めず、でもこどもたちの、友人たちのそれぞれの顔に、言葉に出来ない深い感謝のようなものを感じていました。みんなありがとう。








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